翔生塾inアメリカ Part2参加報告

―――――須坂YEG 小林 晃(長野県)―――――

はじめに
 研修視察旅行といっても、長野から半径400kmを超えたことのない私がアメリカへ行こうというのは、相当な勇気が必要であった。仕事のこと、家族のこと、地域での役割等、日頃私の自由を縛って(?)いる様々なことがあり、とても1週間という長い間留守にすることなど許されないと思っていた。しかし、今回それこそ私を取り巻く多くの人たちの助けによって、長い研修に行く事ができた。まったくもって皆様のおかげである。

 事前に勉強をしていかないといけないと思ってはいたが、なかなか時間がとれず、10年振りの海外ということもあって、荷物をまとめるのが精々であった。今になってみると、やはり事前にいろいろと調べていくべきであったと反省もしている。それでも、見ると聞くとは大違いであることを実感させられた。見ただけではわからないことがあるだろうけれども、聞いただけではもっとわからない。「百聞は一見にしかず」という言葉がもっとも正しい印象かも知れない。

ニューヨークという町

 ニューヨークは近代都市。という印象は最初に町に入った時に崩れてしまった。それは旧い建物が多いからだ。ここ100年程の町であるニューヨークではあるが、戦災にあった訳でもなく、地震などの災害もない、ビル爆破事件があったとしても、ビルがガラガラ崩れるようなことはなかったからだろう。

 高層ビルが立ち並ぶ風景は、新宿とも違う印象だ。それは、50階以上のビルがニョキニョキと建っていて、それも隣接しているからだ。現在工事中の現場もある。まだ開発の余裕があるというのは信じられない。旧いビル群と新しい超高層ビルが混在する風景は他のどこでも見た事がなかった。

 街を歩く人々は多種多様で、まさに人種のるつぼである。白人、黒人はもとより、東洋系、インド系、ほかにもいろんな顔が見られた。アメリカという国が多民族の集まりであることは知ってはいたものの、これも見ないとわからない衝撃であった。たまたま独立記念日前後ということもあって、観光客も多かったのだろう。もともと想像していた「いかにもアメリカ人ぽい白人」の顔が少なくも感じられた。

 見るものすべてが日本からあまり出た事のない私にとっては、新鮮ですばらしいものに感じられた。

 研修の合間を縫って行った有名なジャズスポット「ブルーノート」ではベン・E・キング、ブロードウェイでミュージカル「SWING」、もうひとつ「BirdLand」でもラテンジャズを鑑賞した。そして、セントラルパークやジョンレノンが殺された「ダコタハウス」、「エンパイアステートビル」の86階から見るニューヨークのビル群、イーストリバーを挟んだ対岸で見たマンハッタンの夜景、ニューヨーク市内を縦横無尽に走る地下鉄、メトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館。いずれも、無理して来てよかったと思う絶景であった。

 たまたま独立記念日の翌日、クリントン大統領が同じホテルに泊まっていたことも、ここは「アメリカ!!」を感じることができた。

都市開発

 研修2日目。ニューヨークからバスで50分ほどのところにあるホワイトプレーンズ市に表敬訪問した。ここは人口5万人で、私の住む須坂市より少し少ないがほとんど同規模の市である。しかし、極端に違うのは25万に膨らむという昼間の人口だ。ニューヨークを長野市に置き換えて考えるには無理があるとしても、都市に隣接する地域は昼間の人口が少なくなるのが普通である。なぜこの町の昼間の人口が増えるのだろうか。答は市長のまちづくりのコンセプトと実行力にあると思った。アメリカと日本は行政組織に違いがあるから、当然そのまま受け取れないかも知れないが、それでも参考にはなると思う。

 市長はまず、町づくりにしっかりとしたコンセプトを持っている。それは「テクノロジーセンター」である。

 21年前、政府からの資金を得て市の中心部432戸の一戸建てを市が買い取った。それをどうしたか、爆破したそうだ。その空き地にオフィスビル群を形成した。(たぶん市が建てたのではないと思う。開発許可を与えた程度だろう)その後、IBMやAT&Tといった大企業が事業所を構えていたことがあったらしいが、大企業が町から出てしまうと、大きなビルがガランと空いてしまった。一時期オフィスビルの34%を空室にしてしまったこともあったらしい。しかし、郡の中心地であり、郡役所、病院、大学等があり交通機関も整備されていたため、環境がよいということで中小零細のハイテク企業にスポットをあてた。ビルの近くまで通信インフラを整備し、ビル改造許可を大幅に緩和することで、企業誘致に積極的な施策をしたという。現在では空室13%までこぎつけたそうだ。企業誘致は税収の増加につながり、それは住民サービスへと直結する。器をつくることで建設業界に税金を注ぎ込んでも、そのあとのランニングコストも生み出せない施設建設をメインとした行政では、市民サービスをやっているように見えても実感がない。

 どんな施策にも賛成と反対はあるだろう。そして、反対派の活動のほうが大きくみえるものである。しかし、その施策が市全体にとってどういう影響があって、どう市民の為になるのか(例えば、税収が上がることで、市民税を引き上げなくてもサービスが向上する)ということを打ち出せば、多くの市民は納得するのだと思うがいかがなものか。このホワイトプレーンズの市長(いや、アメリカの政治家)はそのあたりのリーダーシップに優れているのではないかと感じた。

流通

 3日目の研修はアメリカの流通事情と経済というものであった。講師の広山さんはアメリカ経済のレポートを日本の企業に送るという仕事をしていて、相当に日本人から見たアメリカ経済を語れる人であった。

 マスの経済(大量生産大量消費)から、きめの細かいサービスへと潮流が移っているそうだ。昔、日本もそうだった。町の八百屋さんや電器屋がたくさんあった。いまではスーパーやディスカウントショップで買うのが当たり前になっているが、果たしてこれでいいのだろうか。消費者は「安ければいい」から「安くてサービスのよい店で」とわがままなことを言ってきている。日本ではリストラして、人件費を削除することでコストを抑え、価格を下げている。アメリカでは、IT技術の導入に寄る事務や流通の効率を図ることでコストを下げ、その分人的サービス等に投資をしているようだ。そういう「安くてサービスのよい店」が出現してきている。

 驚いたのは本屋さんである。それは、図書館みたいな本屋さんなのだ。立ち読みどころか「座ってゆっくり読んでいってください」というのだ。4フロアーを使っているのだが、その内2階にはコーヒーショップまであり、そこに本を持って行って読んでいいという。それで、さらに定価の2割、3割引で売られている。本屋と言えば、立ち読みしていると、店主が恐い顔をして「はたき」を持ってきて、パタパタやるというイメージだ(そんな本屋はいまはないか?)が、そういう意味では驚くべきブックショップであった。

 スーパーでも、入り口でカゴを渡す人がいたり、レジを済ませたあとに袋詰めを手伝ってくれたり、鮮度の保証をしたり、料理教室をしたりと様々なサービスが提供されているらしい。

 いずれも、見えないところでのコストダウンをはかり、その分を人的サービスにあてている。これなら景気が悪くなるはずがないとも言える。

ネット事情

 わが町須坂出身でニューヨークに在住する知り合いがいたので、案内をしていただきながらいろいろな話を聞いた。その中に電話事情やインターネットに関する話もあった。市内電話と長距離電話はそれぞれ別の会社がしのぎを削っているようで、長距離(国際電話を含む)は、月額基本料金の他に通話料金がかかるそうだが、実際には基本料金はサービス(6ヵ月間)で、月額2500円分までタダで使ってくれと電話会社からアプローチがあるそうだ。結局一銭も払わずに半年経っているとのこと。半年後にさらに別の会社に乗り換えれば、また安い金額で電話が使えるらしい。

 市内通話も格安で、基本料金が1000円、一回の通話(時間に関係なく)が15円ほどだという。プロバイダの料金はだいたい月額2000円で使い放題というので、この辺は日本とさほど変わらないかも知れない。これで、電話料金が日本のインターネット普及に対する大きな壁であることがはっきりとわかる。

 街のあちこちにある看板には相当な割合でホームページのURLが表示されている。ホワイトプレーンズの市長もホームページは自分の宣伝の大きな武器であると言っているように、アメリカでは大きなメディアに育っているようだ。

まとめ

 アメリカはいま、本質を大切にしているなぁと感じた。安くてよいものを追求し、人と人とのつながりを大切にしている。開発も流通もネットもコストの削減は本質的なサービスや顧客の要求を満たすためのものである。コストダウンの上に成り立つものが、本当のサービスであり、新しい商業形態へと結びついている。コストを下げることだけに集中してきた日本のやり方は、近い内に新しい展開をしていかなければならないのではないかと感じた6日間であった。

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